③派遣できない未熟なエンジニア集団

とあるブラック企業に安易に入社した僕ですが。

その後も苦難は続きます。

やたらと長い研修生活。

しかし、どうもそれは研修という名の、売れ残り状態だったようなのです。

売れ残りってなんでしょうね?

派遣がメインのIT業界特有の現象なのです。

 

僕だけ特別扱い? でもCOBOL(コボラー)です…

入社してすぐでしょうか。

ぼくだけ特別扱いを受け始めました。

 

先に入った新人さんから、エクセルの使い方や雑用的な仕事を言いつけられたんですが、

それをあっという間にこなしたからでしょうか?

ぼくに仕事を任せた新人さんが、僕のことを「すごい仕事が早いです」って上司のSさんに報告しているのが耳に入りました。

 

それが理由だからかわからないのですが、ぼくだけ別の仕事を任せられるようになったのです。

上司のSさんは、某大手企業の仕事を任されており、かなりデキル人でした。

その仕事を、僕に手伝ってくれと言ってきたのです。

いやあ、嬉しかったですね。

 

でも、残念なことが一つあったのです。

それは、COBOLという汎用機(大型コンピュータ)で使われるプログラムの仕事だったのです。。。

当時でこそダウンサイジングが求められていましたが、まだまだ大手企業は汎用機がメインでした。

なんだか、つまんなそうな仕事だなって思ったのです。

 

 

実は僕はその頃、Windowsのプログラムがしたかったのです。

とくに「C++」がやりたかったですね。

「VB」でも良かったんですが、当時「C++」はゲームとか組むための言語でもありましたから、やっぱりCがやりたかったですねえ。

今思えば無知から来るつまらない憧れだったんですが、当時は深刻でした。

COBOLかよ・・・と思ってしまったんです。

 

スパルタ教育オバサン現る!モラハラ連発!

ぼくは上司のSさんからいろいろとCOBOLの仕事を教わりました。

でも、ただ言われたことをやっているに過ぎず「僕は何をやってるんだろう?」という状態でした。

つまり、自分が何をしているのか、ほとんど理解してなかったのです。

 

そんな時、Sさんのそばに、山田マリアを太らせて中年にした感じのオバサンが現れました。

誰だろうって聞いてみると、契約社員のKさんという方のようでした。

KさんはSさんの仕事を手伝っている人で、かなりデキル人のようでした。

プロ意識の高い人ですね。

 

ところがですね、プロ意識が高いだけに、かなり指導が厳しい。。。

僕みたいな仕事ができない新人が、仕事内容もよくわかってないのに、

汎用機の端末を、さも仕事をしてるような気になって叩いてると、

気に入らないんでしょうね。

 

ちょくちょく嫌味を言ってくるようになりました。

「大丈夫? 頭、働いてんの?」

これが口癖で、すごく嫌な感じで言うんです。。。苦笑

 

最初はぼくも「仕事ができないんだから仕方が無い」「実際、頭働いてないし」と思っていたんですが、

あまりに何度も嫌味を言ってくるので頭に来ちゃいまして。

 

ついに、たまりにたまった鬱憤を吐き出すかの如く、上司のSさんに相談したんですよ。

そしたら驚くことに、その日からぱったりと嫌味が止まりまして、Sさんすげえなと。。。

「よし、この人について行こう!」って思いましたね。笑

 

いつまで飼い殺すんだよ!いいかげんにしろ!

さて、僕は少し実務も教えてもらいつつ、他の新人さんたちは楽しい研修期間が続きます。

しかし、いつまで研修期間が続くのでしょうか。

研修と言っても教材があるわけじゃなく、本を読んだり、本を読みながら何か作ったり。

「こんなことしてて大丈夫?」と思っちゃうくらいの研修内容でした。

 

というか、そもそも研修メニューというものが無いんです。

Sさんも自分の仕事があるので、ずっと新人たちに教えているわけではありません。

まさに自習に近く、わからないことがあれば、Sさんに聞くという形だったのです。

 

そうしている間に、どんどん新人が入ってきて、研修ルームのデスクに人が増えていきます。

最大で8人くらいでしょうか、新人がデスクに並んでいたように思います。

 

いや、そんなに大きな会社ではないですよ、20人くらいの会社ですし、

そんな8人もの何もできない社員を「研修」という状態で給料払ってるなんてすごいことです。

でも、ぼくたち新人はそんなことはまったく意識せず、

ただ「自分たちはどうなるのだろう」という不安に苛まれていたのです。

 

ある時、新人の仲間(同期)の一人がこう言いだしました。

「俺たちはいつまでこんなことしてるんだろうな、これじゃ飼殺しだろ。」

確かにその通りです、いつまでこんな状態なんでしょう。

僕たちは、プログラムが組みたくてウズウズしているんです。

ゲームのプログラムが組みたいという仲間もいました。

 

次第に、みんなで愚痴を言い合うようになり、僕を含めた新人男子4人は仲良くなったのです。

そして会社が終わったらマクドナルドで愚痴を言うのが習慣になりました。

社長があんな感じですから、もっぱら社長の悪口がメインでしたね。笑

 

売られていくよー♪ ドナドナドーナドーナ♪

次第に新人男子4人で行動することが多くなってきましたが、

ぼくだけはもう実務をやってます。

でも、他の3人は僕に対して妬みや、やっかみはまったくないみたいでした。

どうも、COBOLをやらされていることに同情していたようです。苦笑

 

そうこうしていると、仲間の3人を含めて、徐々に現場に派遣されていくようになりました。

正確には、いちおう僕たちは社員なので「出向」という形になりますけどね。

 

新人たちはある日、会社の営業マンに「おい、面接に行くぞ」と呼ばれるんです。

おかしいですよね、もう入社してるのに面接って。

面接ってのは、派遣先の大手企業の担当者と会って、スキルチェックを受けることを言います。

おおよそ聞かれるのは、過去の経験とステップ量(プログラムの記述量)です。

 

でもね、ここでもブラック企業根性が炸裂。

まったくの未経験なのに、「3年の経験アリ」みたいな嘘を言わされるんです。。。

酷い話ですが、そうすることで未経験の人間を高いギャラで派遣するんです。

ドナドナの世界です。

 

派遣されても戻ってくる人が多発!ヤバイでしょ?

中小零細のIT業界の多くは、中小零細に席を置きながら、就業場所は大手企業というパターンが非常に多いです。

なので、世の中の中小零細企業の「IT社長」と言われている人たちの大多数は、

エンジニアでも何でもなく、ただの派遣会社の営業マンって感じの人が多いんですよ。

 

元リクルートとかのIT社長も多かったですが、基本的に、胡散臭い人が多いです。

見た目から察するに極道系の人もいたでしょうね、派遣業界ってあっち系の人が昔から多いですから。

いまでこそクリーンになりつつありますけどね、ま、でも今でもいますよ。。。

 

さてポツポツと派遣されていく新人の仲間たち。

でも仲間の中には、大手に派遣されて1ヶ月もしないうちに帰ってくるやつもいたんです。

なぜかというと「使えない」という理由で現場からクビになっちゃったんですよね。

実際、そういう人が何人かいましたねー。

 

でもね、そりゃそうですよ。

経歴に嘘を書いて大手に派遣させるのが当時は当たり前でしたからね。

未経験でも「経験3年」くらいは普通に経歴に上乗せされてますから、

派遣先の担当者は「仕事ができる人が来た」と思ってるわけですからね。

 

とはいえ、相手方も面接の時点で薄々わかっていたはずなんですけどね。

こいつは、経験をサバ読んでるなって。

まあ、こういうブラックなやり方が横行していたのが、ぼくの時代のIT業界だったのです。

 

こうして、なかなか派遣できない新人と、派遣しても戻されちゃう新人とで、研修ルームはなかなか人が減ることがありませんでした。

つまり、売れ残り状態ですね。

これって、会社としてはヤバい状態なんですが、そんなこと新人たちはまったく知らず時間だけが過ぎます。

 

ところが、なぜか僕も派遣に出されることに!?

さて、Sさんの元で某大手企業の仕事をしていた僕に、驚くことが起きました。

なんと、営業マンからいきなりの「おい面接にいくぞ」コール!

え、どうして?

Sさんの下で頑張っているのに、どうしていきなり。。。

 

悩みましたね。。。

同時にSさんに裏切られたと思いました。

本当は違うんですよ。

派遣できない新人が8人もいて、会社の赤字はどんどん膨らんでいったのです。

それを回避するために、ぼくも派遣に出されて出稼ぎに行かされることになったのです。

 

そんな事情なんか知らない僕は、「やっぱり、僕の仕事っぷりが悪いから!?」

「うん、そうに違いない」、、、と思い込みます。

 

派遣社員の猛烈Kさんは僕に嫌味を言わなっくなったけど、

それは僕が仕事ができるようになったからじゃなくて、

Sさんが注意してくれたからKさんが黙ったにすぎない。。。

 

あぁ、やっぱりIT業界も僕は向いてないのかなあ…。

正直、ものすごく落ち込みました。。。

 

しかも面接に行く場所は、ビックリするくらいの遠方だったのです。

僕が住んでるアパートから、徒歩の時間も含めれば2時間ほどかかる場所です。

おいおい、せめて都内にしてくれよ。。。

もう最悪です。。。

 

運命の3ケ月目「スミマセン辞めます」

色々悩んだ挙句、やっぱり退職することにしました。

やっぱり、また3カ月です。

「ぼくは3カ月しか持たないんだなあ」と思いました。

 

勇気を出してSさんに「すみません、辞めたいです」と伝えました。

そしたらSさんも、僕が思ってるのと同じことを言いました。

「そうか、じゃあ社長に話すよ。」

「やっぱりオマエが辞めたいって言いだすのは3カ月目だったな・・・。」

とても残念そうにそう言いました。

ぼくもSさんに申し訳なくて悲しくなりました。。。

 

さて、Sさんから合図が出て、恐る恐る社長室に向かいます。

すると社長がものすごい恐ろしい顔で座っています。

すごく怒ってるんだろうなと思ったら、

予想通り烈火のごとく罵詈雑言を浴びせられました。

 

「アタマかち割るぞ!コラァ!」

まず一言目は、ヤクザのような一言。

「オマエはよぉ、アカなんだよ!コラぁ!」

アカとは赤字のことです。

研修という名目でタダで勉強だけしてサヨウナラということを怒っているんです。

いちおう実務もしたんですけど、まあ、確かに足手まといだったでしょうし、アカ(赤字)なのはその通りですね・・・。

それにしても酷い言い方・・・。汗

 

そして、Sさんにもとばっちりが行きます。

「おい、Sよ、どうやってケツふくんだぁ!?」

「オマエがケツふけんのかよ?」

あ、これはマズイなと思いましたね。

 

 

でもまた、僕の方に火の粉が降りかかります。

その時、社長はテーブルの上の灰皿を手に持ちました。

「オイコラぁ、頭かち割るぞ、テメエ!!」

灰皿を振り上げたかと思ったら、ガラステーブルにガンガンぶつけ始めました。

さすがに灰皿で頭を殴られることはありませんでした。

 

今思えば、灰皿もテーブルも、よく割れなかったなあと。。。苦笑

 

そして、灰皿をガンガンと大きな音を立ててテーブルにぶつけながら、説教が始まります。

「お前みてえなやつはよお、末代たたられるぞ!」

「お前の子供も、その子供も、ろくな運命じゃねえぞ」

「こういうのを因果応報というんだ」

なんだかよくわからないのですが、「末代祟るぞ」的な薄気味悪い説教でした。

ヤクザみたいな風貌の社長とは思えない、なんとも妙な説教でした。

 

さあ、僕はどうなっちゃうんでしょうか。。。

東京湾に沈められるんでしょうか。。。

 

④経歴詐称で大企業に派遣!それでも幸せなエンジニア生活

おすすめの記事